「インバースレンダリングによる物体表面反射特性の推定」[論文誌Vol.47, No.SIG9(CVIM10), pp.69-86 (2006)]

平成18年度論文賞受賞者の紹介

「インバースレンダリングによる物体表面反射特性の推定」[論文誌Vol.47, No.SIG9(CVIM10), pp.69-86 (2006)]

[論文概要]
 物体の表面反射特性の推定は実環境と仮想化された物体との間の陰影矛盾を解決するために重要な課題となっている。近年、この問題に対する1つの解決法としてインバースレンダリングが注目されている。本総合論文では、物体表面反射特性の推定をインバースレンダリングという枠組で解決する一連の手法についてまとめる。具体的には物体表面のテクスチャ画像と距離画像を利用した3つの推定手法について詳細を述べ、その推定結果を比較することで大局的なインバースレンダリング手法の有効性を明らかにする。また、様々な仮想環境内の照明条件に対して忠実に物体を表現できることを示す.

[推薦理由]
 本論文はCVIM論文誌の特徴である総合論文として、著者の一連の研究についてそれらに通底する概念を交えながらまとめられた18頁に及ぶ大著である。論文では対象物体の形状情報と制御された光源下における複数のカラー画像をもとに物体表面の反射特性を密に推定する手法について述べている。具体的には局所的な反射特性を推定する手法とこれを安定化するための光源位置の選択手法に続き、拡散相互反射を仮定したインバースラジオシティ法、さらに鏡面相互反射を考慮したインバースフォトンマッピング法を提案しているが、これらに共通する理論的基盤の構築と各手法の位置づけ、比較検討がなされており、この問題に対する新規性・有用性のみならず当該分野における新たな見通しを与える優れた論文である。よって本論文を論文賞に推薦する。

町田 貴史 君  平成12年奈良先端科学技術大学院大学博士前期課程修了。平成14年同大中退。平成14年より大阪大学サイバーメディアセンター助手。平成16年より(株)豊田中央研究所に勤務。博士(工学)。コンピュータビジョン・コンピュータグラフィックスの研究に従事。電子情報通信学会、ACM、IEEE各会員。

竹村 治雄 君 昭57阪大・基礎工・情報工卒。昭62同大大学院博士後期課程単位取得退学。同年(株)ATR入社。3次元ユーザインタフェース、CSCW、仮想現実の研究に従事。平6奈良先端科学技術大学院大学・情報科学研究科助教授。工博。平13阪大・サイバーメディアセンター教授。電子情報通信学会、IEEE、ACM、日本VR学会各会員。

横矢 直和 君 昭49阪大・基礎工・情報卒。昭54同大大学院博士後期課程了。同年電子技術総合研究所入所。画像処理ソフトウェア、画像データベース、コンピュータビジョンの研究に従事。昭61~62マッギル大・知能機械研究センター客員教授。平4奈良先端科学技術大学院大学・情報科学センター教授。現在、同大情報科学研究科教授。工博。電子情報通信学会、人工知能学会、日本認知科学会、映像情報メディア学会、画像電子学会、日本VR学会、IEEE、ACM SIGGRAPH各会員。