2014年度喜安記念業績賞
2014年度喜安記念業績賞の表彰
◆アイデンティティ管理技術の標準化と普及・実用化
アプリケーションサービスの増大に伴うデジタル個人情報管理の煩雑化の問題を早くから予見し,ユーザアイデンティティ情報を本人許諾により安全に流通させる方式について,グローバルなフォーラムへの参画して標準策定に貢献するともに,実装により機能性を実証した.これらの標準に準拠した製品を世界に先駆けて世に送り出した.デジタル放送,次世代ネットワーク,クラウド連携,医療健康情報活用,電子政府など各産業分野向けに普及展開する中で,参照仕様を規定するなど適用領域の拡大に貢献してきた.その後提案されてきた類似方式に対しても,相互運用により選択的に技術を使い分ける枠組みを提唱し,製品としてこれらの連携機能を順次実現して世の要請に応えてきた.以上のように当該技術の標準化,実用化,産業各分野への普及展開について非常に大きな貢献を果たした.
高橋 健司 君(正会員) 1986年東京工業大学大学院情報理工研究科修士課程修了.同年日本電信電話株式会社入社.以来,ソフトウェア工学,ユビキタス・コンピューティング,アイデンティティ管理技術,SDN等の国際標準化及び研究開発に従事.現在,NTT Innovation Institute, Inc.勤務.米国シリコンバレーにおいて,セキュリティ分野におけるオープンイノベーションを主導.中心的な取り組みとして,世界中の脅威情報を収集・分析・共有するためのプラットフォームの開発を推進.1989年本会学術奨励賞受賞.ACM Workshops on Digital Identity Management,IEEE COMPSAC,Liberty Alliance,Kantara Initiative,Open Networking Foundation等で各種委員を歴任.博士(工学) |
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直井 邦彰 君(正会員) 1988年早稲田大学理工学部応用物理学科卒業.1990年同大学大学院物理学及応用物理学専攻修士課程修了.同年日本電信電話株式会社入社.ソフトウェアリエンジニアリング,アイデンティティ管理技術,次世代ネットワーク技術,クラウドコンピューティング等の研究開発,および移動体向けサービス開発に従事.現在,NTTソフトウェアイノベーションセンタ主任研究員.博士(工学)1997年~1998年Technische Universität Berlin(ベルリン工科大学)客員研究員.電子情報通信学会会員. |
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久米田 博 君
1988年東北大学理学部数学科卒業.同年,NTTソフトウェア株式会社入社.以来,汎用機OS・仮想計算機システムの開発・SEを経て,アイデンティティ管理技術を含めてセキュリティソリューションの開発・普及に従事. |
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李 焔 君 1995年天津大学大学院機械工程研究科修士課程修了.2001年NTTソフトウェア株式会社入社.以来,主にセキュリティソリューションの開発,アイデンティティ管理技術の標準仕様の実装,相互接続性検証に従事. |
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永野 一郎 君 1998年慶應義塾大学法学部政治学科卒業.1999年NTTソフトウェア株式会社入社.以来,アイデンティティ管理技術の実装および製品開発に従事.2010年,情報セキュリティ大学院大学博士前期課程修了.著書(共著)に『クラウド時代のエンタープライズ・アーキテクチャ』(サイバー出版センター). |
◆オープンソースソフトウェアによるセキュアな計算機システム実現への貢献
受賞者らは,SELinuxの処理オーバヘッドとリソース消費の削減,SELinuxのポリシ生成支援機構,セキュアなデータベース(SE-PostgreSQL),および国産セキュアOSであるTOMOYO Linuxを実現した.これらの成果は,オープンソースソフトウェアであるLinuxとPostgreSQLの標準的なセキュリティ機能として正式に採用され,セキュアなシステムの実現に大きく貢献した.侵入されることを前提とした対策がますます重要となっており,被害の範囲を抑制できるセキュアOSが今後さらに重要になってくると考えられる.よって,受賞者らの一連の成果は,実システムのセキュリティの向上やセキュリティ機能の普及への貢献が著しいと認められる.
中村 雄一 君(正会員) 1999年東京大学理学部物理学科卒、2001年同大大学院理学系研究科物理学専攻修士課程修了、2006年The George Washington University Master of Science修了。2001年日立ソフトウェアエンジニアリング(現日立ソリューションズ)入社、セキュリティ・M2Mの研究開発に従事。2015年4月より日立製作所に所属、エネルギーソリューションの開発に従事中。岡山大学大学院自然科学研究科 産業創成工学専攻 博士後期課程 在学中。2010年度情報処理学会論文賞。情報処理学会会員。 |
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海外 浩平 君
2003年 筑波大学 経営・政策科学研究科修了。同年日本電気株式会社入社。Linux開発・サポート業務の傍ら、SELinuxのアクセス制御モデルをPostgreSQLに適用するSE-PostgreSQLの開発で2006年度IPA未踏ソフト創造事業で天才プログラマ認定。以降、PostgreSQLコミュニティでの活動に軸足を移す。現在はGPGPUを用いたDBアクセラレーション技術 PG-Strom の開発・事業化プロジェクトリーダーを務める。 |
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原田 季栄 君(正会員) 1985年北海道大学工学部卒業.同年日本電信電話株式会社(横須賀電気通信研究所)入社.1988年NTTデータ通信株式会社(1998年に株式会社NTTデータに社名変更)分社に伴い移籍.1991年マサチューセッツ工科大学AthenaMUSEコンソーシアム客員研究員,1993年に復帰.2003年よりオープンソースのR&Dマネジメントに従事, 開発成果の一つであるTOMOYO Linuxについて2009年メインライン化を実現した.2012年情報セキュリティ大学院大学セキュリティ研究科博士後期課程修了(情報学).同年NTT OSSセンタでOSSシステムのサポート業務に着任.2015年NTTデータ先端技術株式会社,現在に至る. |
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半田 哲夫 君 2001年青山学院大学理工学部卒業.同年NTTデータカスタマサービス株式会社入社.2007年よりNTTデータ先端技術株式会社.2003年からOSSセキュリティ強化のための研究に従事.2009年にメインライン化されたTOMOYO Linuxをはじめ,AKARIやCaitSithなどLinuxカーネル内でのアクセス制御機能を開発.第8回日本OSS貢献者賞を受賞.2011年よりセキュリティ・キャンプの講師として後進の育成に参画.2012年から3年間はNTT OSSセンタでLinuxシステムのトラブル対応業務に従事. |
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山内 利宏 君(正会員) 1998年九州大学工学部情報工学科卒業.2000年同大学大学院システム情報科学研究科修士課程修了.2002年同大学院システム情報科学府博士後期課程修了.2001年日本学術振興会特別研究員(DC2).2002年九州大学大学院システム情報科学研究院助手.2005年岡山大学大学院自然科学研究科助教授.現在,同准教授.博士(工学).オペレーティングシステム,コンピュータセキュリティに興味を持つ.2010年度JIP Outstanding Paper Award,2012年度情報処理学会論文賞,2012年度情報処理学会学会活動貢献賞など受賞.情報処理学会,電子情報通信学会,ACM,USENIX,IEEE各会員. |
◆社会・産業の発展に寄与する新たな人口統計情報「モバイル空間統計」の実用化
モバイル空間統計は,携帯電話の在圏情報等から推計された24時間×365日の日本全国の人口統計情報である.5年周期の国勢調査を補完する情報として評価され,CEATEC JAPAN 2011 安心・安全ネットワーク部門のグランプリを受賞している.まちづくり分野では柏市の商圏調査など,防災計画分野では埼玉県の帰宅困難者推計調査など,観光分野では沖縄県の県外観光客調査など,政策等の意思決定を支え,社会・産業の発展に寄与している.総務省研究会報告書やメディアなどで先行的な事例として紹介されるように,プ ライバシ保護の仕組みの導入や自主ガイドラインの公開など,有識者研究会の検討結果に基づく措置を通じて社会から受容されることにも成功している.
山口 高康 君(正会員) 2001年電気通信大学大学院電気通信学研究科博士前期課程修了.同年,株式会社NTTドコモ入社.以後,モバイルカメラを用いた対象判別技術,iモード検索アルゴリズム,モバイル空間統計の研究開発に従事.現在,先進技術研究所 主任研究員.2002年度情報処理学会MBL研究会優秀論文賞.2005年より電気通信大学非常勤講師.2015年より情報処理学会SPT研究会幹事.情報処理学会会員. |
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小林 基成 君 2003年横浜国立大学大学院工学府物理情報工学専攻博士課程前期修了.同年,株式会社NTTドコモ入社.以後,アドホックネットワーク,仮想化ネットワーク,モバイル空間統計の研究を経て,2013年よりモバイル空間統計の商用システム開発・運用に従事.2007年電子情報通信学会学術奨励賞.2014年電子情報通信学会通信ソサイエティ活動功労賞.2014年より電子情報通信学会MoNA研究会専門委員.電子情報通信学会会員. |
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鈴木 俊博 君 1998年筑波大学第三学群情報学類卒業.同年,株式会社NTTドコモ入社.以後,iモード用交換システム,アドホックネットワーク,仮想化ネットワーク,モバイル空間統計の研究に従事.2008年筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了.2013年より株式会社ドコモ・インサイトマーケティングにてモバイル空間統計の事業推進に従事.2005年電子情報通信学会学術奨励賞.2007年電子情報通信学会通信ソサイエティ活動功労賞.2005年より2007年電子情報通信学会MoMuC研究会幹事.博士(工学).
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◆工場部品供給の完全自動化
工場での多品種部品供給は,従事する作業者にとって負担の大きいものであったが,有効な自動化方法が確立されていなかった.特にバラ積みされた部品を効率的に取り出す作業に課題があった.堂前らは,部品の形状に依存しない汎用的な部品取り出し方法を確立し,3次元ビジョンセンサMELFA-3D Visionとして製品化した.これにより,多品種部品供給の自動化が実現し,産業用ロボットの新規市場拡大に貢献した.
堂前 幸康 君 (正会員) 2006 年北海道大学大学院情報科学研究科博士前期課程修了.2008 年三菱電機株式会社入社.先端技術総合研究所主席研究員.ロボットビジョンの研究開発などに従事.R&D100Award(2014),ロボット大賞・日本機械工業会会長賞 (2012),JRM Best Paper Award(2012),SSII優秀論文賞(2006)など受賞.電子情報通信学会,精密工学会,日本ロボット学会,IEEEの会員.博士(情報科学).
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奥田 晴久 君 1991年京都大学工学部精密工学科卒業, 1993年同大学院工学研究科修士課程修了, 三菱電機(株)入社. 先端技術総合研究所にて2次元/3次元画像処理技術・メカトロニクス技術の研究開発業務に従事.メカトロニクス技術部 機械動力学グループマネージャを経て, 2012年より名古屋製作所 ロボット製造部 知能化開発推進担当課長.産業用ロボット向け3次元ビジョンセンサ, 力覚センサ等の知能化技術の製品化を推進し, 現在に至る.2012年ロボット大賞,2014年R&D100賞等を受賞.博士(情報科学).
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永谷 達也 君 2006年東京工業大学大学院総合理工学研究科物理情報システム創造専攻博士前期課程修了.2006年三菱電機株式会社入社.先端技術総合研究所研究員,現在に至る.産業用ロボット,FA加工機,FAコントローラなどの研究開発に従事.計測自動制御学会,システム制御情報学会の会員.
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田中 健一 君 1981年京都大学大学院工学研究科博士前期課程航空工学専攻修了. 1981年三菱電機株式会社中央研究所入社. 2009年同社先端技術総合研究所副所長. 2010年同社先端技術総合研究所 所長. 2011年同社役員理事先端技術総合研究所所長.2014年同社開発本部役員技監. 受賞歴:映像情報メディア学会技術振興賞開発賞(1999年),日本神経回路学会研究賞,日刊工業新聞社十大新製品賞, 日刊工業新聞社第4回モノづくり連携大賞特別賞(2009年), 第5回日本ロボット大賞日本機械工業連合会会長賞(2012年)
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藤田 正弘 君 1983年東京大学大学院工学系研究科機械工学専門課程修士課程修了. 1983年三菱電機株式会社応用機器研究所入社. 2008年同社米国 Mitsubishi Electric Research Laboratories出向, Executive Vice President & Chief Financial Officer. 2013年同社人材開発センター センター長. 2014年同社先端技術総合研究所所長.2015年同社役員理事先端技術総合研究所所長. 受賞歴 日本ロボット学会実用化技術賞(2001年). 近畿地方発明表彰発明奨励賞(2007年). 日本機械学会ロボティクスメカトロニクス部門技術業績賞(2012年)
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