「繋ぐという役割」
櫻井 祐子(会誌/出版担当理事)
2023年6月に会誌/出版担当理事を拝命してから、早くも2年目の半ばに差し掛かろうとしています。会誌/出版担当理事として、会誌『情報処理』を担当するだけでなく、毎週配信されるメールニュースの確認や、この「理事からのメッセージ」の閲読なども行っています。各理事が執筆する原稿は、それぞれの担当内容だけでなく、日常生活での情報処理技術に関する話題もあり、毎回楽しみに拝読させていただいています。しかし、その一方で、自分が何を書けばよいのかとプレッシャーを感じていた中で、ついに私の番が回ってきました。
この原稿を執筆するにあたり、改めて会誌/出版担当理事としての役割を考えると、「繋ぐ」ことの重要性を強く感じています。会誌は、学会と会員を繋ぐ重要な役割を担っています。さらに、理事としては、学会と会員だけでなく、編集委員会をはじめとした担当委員会、理事会、事務局など、さまざまな関係者との橋渡しも大切な務めです。もちろん、学会全体としても、研究者同士や学術界と産業界を繋ぐことは大きな使命の一つと思います。
会誌『情報処理』では毎号特集が組まれていますが、2024年10月号と11月号は、本会ならではの特集と思います。10月号の「私のコンピューティング人生の原点」は、「皆さんはなぜ情報処理の分野に進んだのか?」という素朴な問いから始まった企画で、さまざまなバックグラウンドを持つ方々が自身の原点について執筆しています。11月号では「ジェンダーと情報」というテーマのもと、本会をはじめとした、いくつかの機関でのダイバーシティ推進に関する取り組みなどが紹介されています。このように、技術的な内容にとどまらず、社会的課題を踏まえながら、情報処理にかかわる人々や機関に焦点を当てた特集をタイムリーに組んでいることも、本会誌の大きな特徴です。ぜひ会誌をお読みいただき、アンケートへのご協力をお願いいたします。アンケート結果は今後の企画に役立てられます。
情報処理学会では、会誌の特集でも反映されているように、ダイバーシティに対する先進的な取り組みが進められています。会誌担当理事が担当しているInfo-WorkPlace委員会では、ダイバーシティや働き方に関する活動を行っており、その一環として、全国大会やFITの昼休みに「情処ラジオ」という企画を実施しています。私は2024年3月の全国大会と9月のFIT2024で「情処ラジオ」をお手伝いし、学生アルバイトの方とともに参加者へのインタビューを行いました。急な依頼にもかかわらず、多くの方々が快く応じてくださり、心から感謝しています。学生たちからは、「研究が楽しい」「発表は緊張したが、良い経験になった」「情報技術にかかわる仕事に就きたい」といった前向きなコメントが多数寄せられました。このような企画を通じて、若い世代の声を広く社会へ繋げていくことも、重要な役割の一つだと感じています。
最後に、この記事を書いている直前に、ノーベル物理学賞とノーベル化学賞が人工知能研究者に授与されることが発表されました。これまで、情報科学分野での最高の賞はチューリング賞とされてきたため、ノーベル賞との関連はあまり考えられていなかったかと思います。情報科学における研究が他の分野に大きなインパクトを与えつつある今、学会としても日本人研究者が将来ノーベル賞を受賞できるような礎を築き、他分野の研究へと繋げていく必要があると思います。私は、その「繋ぐ」役割に少しでも貢献できればと考えています。