2025年04月03日版:湊  真一(教育担当理事)

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    「情報分野の若手人材育成に必要なものとは

    湊  真一(教育担当理事)

     この3月に立命館大学・大阪いばらきキャンパスで開催された第87回全国大会では、イベント企画の一つとして「第7回中高生情報学研究コンテスト」が行われました。私も現地の様子を見てきましたが、全国の地区予選を通過した42チームが一堂に会して熱気あふれるポスターセッションが展開されており、各学校の制服姿の中高生チームが日頃の成果を発表する晴れ舞台となっていました。審査発表では入選を逃した生徒が涙するなど、部活と青春のまぶしさいっぱいの光景が見られたようです。

     このコンテストはコロナ前年の全国大会で初回が開催され、その後、コロナによるオンライン開催の期間に参加者数が年々増加し、コロナ後の実開催では全チーム出場が難しくなってきたため、昨年からは全国を5地区に分けた予選ブロック大会がスタートしました。今年度は全国130チームから42チームが選抜されています。今では全国大会に出場すること自体が生徒にとって特別な体験になっていて、全国の中高生の目標の一つとなっています。各地区ブロック大会は本会支部の先生方のご尽力により運営されています。関係各位のご協力に感謝いたします。

     一方、同じ全国大会のイベント企画として「情報科学の達人プログラム」の成果発表会も開催されていました。こちらは日本情報オリンピックからの推薦や一般公募で選ばれたトップ層の中高生を発掘し、世界の第一線で活躍する若手研究者と交流させて才能を伸ばしていくプログラムで、例えるなら、U20サッカー日本代表の強化試合みたいな感じです。こちらはこちらで大人と若者がいっしょになって熱いポスターセッションが繰り広げられており、中には大学生レベルの発表も多く見られました。

     我が国は近年では情報オリンピックや国際プログラミング競技会など、中高生から大学学部レベルでは世界トップクラスの成績を維持していますが、それ以降の情報系の研究力では、特にAI分野で米国や中国に遅れを取っている状況です。これまでの傾向として、正解がある問題を素早く解く短距離走では強いのですが、明確な答えがない問題を長時間かけて取り組む長距離選手の育成がまだ不足しているようです。情報科学の達人では、短距離走でそこそこ強い人の中から長距離にも強い人材を発掘し、トップ研究者・技術者を育成することを目指しています。

     サッカーで地域のJリーグが発展して日本代表が強くなったように、情報技術においても裾野とトップ層の両方での人材育成・強化が重要です。中高生情報学研究コンテストと情報科学の達人は、それぞれボトムアップとトップダウンでの補完的な取り組みと言えると思います。

     情報処理学会は、ジュニア会員制度の充実、小中高校教員への支援、情報入試への協力など、伝統的に教育分野の活動を重視しています。これらは収益事業ではありませんが中長期的にきわめて重要であることは間違いなく、多くの熱心な会員によるボランティア的な活動で支えられています。教育分野は短期的収支にこだわっていてはできないことばかりなのですが、そうは言っても、学会の財務が安定していなければ中長期的事業も維持できないので、世のためになるなら何でもやればよいというわけにもいかないのが難しいところです。今後もうまくバランスを取りながら中長期的な活動を維持していってもらいたいと思います。
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