「学会誌『情報処理』の裏側」
木村 朝子(会誌担当理事)
ちょうど1年ほど前、当時会誌担当理事の高橋尚子先生が理事からのメッセージで会誌担当の「会誌」以外でのさまざまなお仕事についてご紹介くださいました1)。なので、今回のメッセージでは、会誌「情報処理」についてご紹介させていただきたいと思います。私は、理事に就任して初めて情報処理学会の会誌編集に携わらせていただきましたので、読者の皆さんと近い立場から「へぇ~知らなかった!」と思ったことをご紹介させていただきたいと思います。
「情報処理」は、情報処理学会の会誌で、毎月1冊発刊されています。前編集長の稲見昌彦先生の時代にハイブリッド刊行に移行し、現在は紙媒体と電子記事、note、X(旧Twitter)をハイブリッドに組み合わせたスタイルとなっています2)。note3)には、巻頭コラムや編集長の独言、そのほかにも会誌中の楽しい記事がピックアップされて、無償で公開されています。noteでは、随時最新の記事が公開されるので、紙媒体が発刊される前に記事を読むことができます。また、「♡(スキ)」やコメントの入力などもできるので、読者の皆さんとインタラクティブなやり取りが可能です。ハイブリッドに移行してからは、「情報学広場(情報処理学会の電子図書館)」の方で「情報処理」のすべての記事が電子的に公開され、紙媒体では「特集」など一部の記事を含まない形で会員の皆様に送付されています。ですので、日頃紙媒体で学会誌をご覧になっている皆様には、ぜひnoteや電子記事の方も積極的にご活用いただければと思います4)。
すでに編集長という言葉が登場していますが、情報処理学会の会誌には「編集長」がおられます。現在の編集長は、お茶の水女子大学の五十嵐悠紀先生で、7代目の編集長になります。五十嵐先生は編集委員歴も長く、困りごとに即座に対応してくださる「情報処理」の超ベテラン編集者です。会誌「情報処理」の編集には3人の副編集長も含め、実に140名近くの編集委員が携わっています5)。初めて聞いたときには、その人数の多さに本当にびっくりしました。情報のさまざまな分野の記事に対応できるように、会誌編集委員会には8つのWGが存在し、各々のWGで会誌に掲載すべき記事について議論され、特集号記事やその他の連載記事の企画が検討されています。
こんな大所帯の編集部ですが、編集委員会では、研究者のみならずジュニア会員の皆さんにも読みやすく、喜んでもらえる記事が掲載できるようにと日々議論されています。連載漫画の「IT日和」「IT紀行」は大人にも分かりやすくて面白いですし、「先生、質問です!」では情報に関する本当に素朴な質問に色々な専門家の方が回答されています。「ぺた語義」では、今注目の情報教育に関する内容が読みやすいコラムとしてまとめられています。
会誌の最初に登場する巻頭コラムでは、今年(2014年)の1月号は歌舞伎俳優の中村獅童さん、昨年(2023年)10月号は前デジタル副大臣の大串正樹さん、9月号はSF作家の野尻抱介さんといったように、本当にさまざまな分野の方にご執筆いただいています。一読者として読んでいたときには、こんな情報とは直接関係なさそうな著名な方にどうやって執筆してもらっているのだろう?と思っていました。実際には、編集委員の知り合いづてでお願いする場合もありますが、事務所に直接依頼していることも多いです。これまでに依頼してお断りされた方のリストもなかなかの数でした(笑)。個人的には昨年(2023年)の8月号に掲載されていたピアニストの角野隼斗さん(Youtubeでは「かてぃん」の方が有名かも)のコラム「創造とは制約である」がとても面白かったです。
皆様にも色々な形で会誌を楽しんでいただければと思います。
参考